2016年2月 7日

そうだったのか! 無歯顎補綴治療 <応用編>

 基礎編のメモは http://www.kojimashika.net/2015/08/post-1155.html
熟義歯をめざして~基本が作法~
講 師 野村 修一 氏 
 新潟大学 名誉教授、よこごし野村歯科クリニック院長
メモ
高度顎堤吸収症例への対処

 A.大原則、まず、下顎義歯を安定させよう
    ズレない程度におさまっている(Muscle Balance)
  1. Denture Space に収まるように
   ① 前歯部
Denture Space.jpg・上唇部の寂しさを気にして、上顎前歯を唇側に排列するため、
  下顎前歯も唇側になるパターンが多い。
 解決策として、
  大きめの人工歯を前歯に排列することで上唇部を豊に見せる
・開口時の口唇圧でも簡単に下顎義歯が後方に移動するため、
      下顎義歯は緩み、下顎顎堤粘膜は痛い。
   ②臼歯部
歯槽頂線.jpg・歯槽頂間線の法則に囚われて人工歯を舌側に排列するために、
  舌房が確保できない

・歯槽頂間線は顎堤頂上の犬歯部と臼後結節を結ぶ直線ではなく、
  歯槽頂を連ねた曲線の代表線である
    ・歯槽頂線を模型に明示する(赤)
    ・歯槽頂間線上に下顎人工臼歯の中心溝が通る
    ・上顎のために下顎を舌側に排列しない
    ・床翼形態が不良なら反対咬合
      (上顎臼歯を排列できる余裕があっても限度がある)
 
補綴学的歯槽頂線.jpg ・補綴学的には頬側、舌側骨縁のほぼ中央が顎堤頂となる

 

 

 2.舌小帯部位の辺縁封鎖
    ・骨縁を圧迫し痛いため、舌側床縁が短く薄くなる
      顎堤が吸収すると顎舌骨筋線が顎堤頂に近接する。
      筋圧形成で通常の舌運動を行わせると、
      口腔底粘膜が顎堤頂付近まで挙上するため、
      舌側床縁が顎舌骨筋線(骨縁)上に位置する。
      そのため、義歯が動揺すると骨縁を圧迫し痛いため、
      疼痛部を削除していくと舌側床縁が短く薄くなる
    ・下顎義歯が浮き上がる
   解決策
    ・ユーティリテイワックスで床縁を
      口腔底粘膜(軟らかい部位まで)に沿わせて延長し確認する

 B.上顎床縁の幅(水平方向への拡大)を回復する
  1.顎堤の吸収方向
顎堤の吸収方向.jpg・上顎は唇頬側が吸収し、下顎は顎堤の高さが減じる方向に吸収する。

 


  2.効果
    ①維持力の増加
     ・周囲筋群の運動を妨げずに、唾液層面積の増加
    ②頬筋による固定作用の増加
     ・辺縁封鎖

 C.症例報告
  1.下顎は容易に浮き上がり、上顎は咬合で前上方へ動揺
    ①上下顎前歯をブロックで切断し、舌側移動
    ②印象採得時のトレー、咬合採得時の咬合床が
      浮き上がらず収まっていること
    ③下顎頬側に食物が溜まる
      ・陥凹している床翼にT.cond.材を盛り上げ経過観察
      ・改善したのでレジンに置換し豊隆形成
  2.頬粘膜の誤咬の原因
    ①頬側咬頭水平被蓋の不足
    ②頬側床縁の不良(長さ、厚さ不足)
    ③咬合高径の不足
    ④頬側よりの臼歯部歯列
    ⑤不十分な慣れ
    ⑥下顎床後縁(臼後パッド部)の対合部位とのスペース不足

今さら聞けない歯科臨床シリーズ講演会 第7回
熟義歯をめざして~基本が作法~
講 師 野村 修一 氏 
 新潟大学 名誉教授、よこごし野村歯科クリニック院長
と き 2016年 2月7日[日] 午前10:00~12:30
ところ ホテル金沢 2階 ダイヤモンド
   (金沢市堀川新町1番1号 TEL:076-223-1111 )
対  象 : 会員医療機関の 歯科医師、 スタッフ (定員 100人)
     ※定員になり次第締め切ります
参加費 : 無料  チラシ 無歯顎補綴治療 <応用編>.pdf
申込み : 医療機関名、お名前、電話番号を明記のうえ、保険医協会にお申し込み下さい。
主 催 : 石川県保険医協会 
  金沢市尾張町2-8-23 太陽生命金沢ビル8階
   TEL 076-222-5373 FAX 076-231-5156
   Eメール ishikawa-hok@doc-net.or.jp 

               <ご案内>
 超高齢社会に突入し、4人に1人が65歳以上となった日本。歯科においては、今後ますます、多職種連携と訪問診療による治療ニーズが高まると思われます。求められる診療内容としては、摂食・嚥下などの口腔機能の維持・回復、歯科衛生士による口腔ケアや、歯科医師による義歯などの補綴治療がその中心になるでしょう。
 しかしながら、義歯治療は歯科治療の中でもとりわけ難しい治療であり、数回の診療で患者さんの痛みを完全に取り除くには、数多くの経験と知識が必要になります。
 その義歯による補綴治療について、正しく、なおかつ分かりやすく解説していただくために、今年の8月に<基本編>をお話いただき大変好評だった野村修一先生を再びお迎えすることとなりました。
 前回の<基本編>にご参加いただけなかった方は、石川県保険医協会のホームページより講演動画を見ることができますので、ぜひご覧ください。
 http://ishikawahokeni.jp/info/sikarinsyo2015.html
 今回の講演会は、「そうだったのか!無歯顎補綴治療」の<応用編>として企画しました。難症例を抱えて四苦八苦している先生も、大変参考になるお話をお聞きできると思います。
 多くの先生方のご参加をお待ちしております。

             <抄 録>
                           講師  野村 修一

 前回の基本編では、高度顎堤吸収症例への対処として、下顎義歯の安定と上顎義歯の吸着を図る方法を説明した。下顎では顎堤吸収が大きくなると、唇・頬や舌から受ける側方圧の影響が強くなってくるので、人工歯の排列位置や義歯外形は筋圧のバランスがとれたスペースに一致させることが重要となる。上顎では吸収によって顎堤弓が縮小して口腔前庭部が変化するため、吸収程度に応じた床縁の厚みを付与して唇・頬の粘膜との接触を回復して辺縁封鎖を図る必要がある。Biometric tray は床縁の厚みを回復する目安となるので有用である。
 義歯補綴治療では粘膜面と咬合面とは一体で、義歯床とりわけ下顎義歯床の安定なくして咬合接触の安定はない。逆に、床内面と顎堤粘膜との位置関係が大きくずれなければ、咬合接触によって床内面は顎堤粘膜側に圧接される。吸着していなくとも維持が回復することで、不快が少なく義歯を使用できる症例は多い。特別な術式でなくとも基本を順守して製作され、患者さんが良く慣れて使いこなせる義歯を「熟義歯」と呼びたい。多様な患者さんの口腔内に馴染むには、症例に則した応用力が求められるが、基本に裏打ちされた基盤がないと収拾がつかなくなることが多い。熟義歯製作でも基本が大切な作法と考えている。
 今回の応用編では、高度な下顎顎堤吸収症例、複製義歯を応用した症例、咬合が大きく崩壊した症例など、私の日頃の臨床術式を紹介したい。

              <講師略歴>
昭和48年3月  新潟大学歯学部卒業
昭和48年5月   新潟大学助手(歯学部 歯科補綴学第1講座)
昭和59年4月   新潟大学助教授(歯学部  歯科補綴学第1講座)
平成 5年5月    新潟大学助教授(歯学部附属病院  特殊歯科総合治療部)
平成10年 1月    新潟大学教授(歯学部  加齢歯科学講座)
平成14年4月  新潟大学大学院教授(医歯学総合研究科口腔生命科学専攻、
          加齢・高齢者歯科学分野
平成20年7月  補綴系分野再編成により包括歯科補綴学分野(有床義歯学)を担当
平成26年3月  新潟大学定年退職
平成26年4月  新潟大学名誉教授
平成27年6月  よこごし野村歯科クリニック 院長

日本補綴歯科学会  専門医、指導医
日本老年歯科医学会 認定医、指導医

 

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