2013年7月22日

超高齢社会における低栄養の予防と対策

  ―多職種連携とMNA®について―  MNA_japanese.pdf
雨海 照祥氏.JPG講 師  雨海 照祥 氏 武庫川女子大学 生活環境学部 食物栄養学科 教授
と き  7月 21日(日) 午前 9時~11時
ところ  ホテル金沢 2階 ダイヤモンド
対 象  歯科医師、医師、医療・介護関連職種の方など 定員200人
参加費  無 料 (要申込み) ※保険医協会の会員でない方もご参加いただけます
申込書  雨海教授講演会申込書.pdf
主催  石川県保険医協会歯科部

メモ
 外来通院している患者の中からAt riskとプレサルコペニア(歩くスピードは遅くないが、ふくらはぎが31㎝以下の人)をピックアップする。そして、早期に介入する。軽い運動と大豆やヨーグルトを食べ、日光を浴び、水分補給を心がける。

1.超高齢社会
  ・65歳以上の割合が7%を高齢化社会、14%を高齢社会、21%を超高齢社会
    それぞれを1970年、1992年、2010年に到達
    今後ますます増え続け、28%を2020年に、35%を2030年と予想
    ・65歳から75歳よりも75歳以上が著しく増えていく
    ・サポート(介護)を必要とする人が増えている

2.低栄養症候群(MS)
    ・低栄養は疾患
    ・飢餓によるMS、慢性疾患によるMS、急性疾患によるMS
    ・定義 意図しない5%の体重減少(入院1ヶ月間に、在宅の場合は6ヶ月に)
        摂取量の不足(必要量の6割以下が10日以上続く)
  ・MSは年齢因子よりライフスタイルの違いの影響が大きい
    ただし、75~85歳では年齢の影響も無視できない
   (65歳以上というくくりを74歳までと75歳以上に分ける必要あり)
    74歳までは入院ありより入院なしが多いが、75歳を超えると入院が多くなる
   ライフスタイルとしては、①摂食障害、②薬、サプリメントを3種類以上、
    いずれも口の中に入れるものが関係していた
3.MNA
    ・摂食量の不足とその結果としての体重減少をスクリーニングするMNA-SFは
     特に、在宅高齢者に有用である
  ・1000人、50項目、1年間の調査で項目を絞り込んだ
  ・18項目と6項目の精度はあまり変わらない
    ・食欲低下・食事量減少は未来の情報であり、1kg以上の体重減少は過去の情報

4.低栄養のおそれあり(At risk)
  ・At riskの高齢者の50%が1年以内に入院などの有害事象を起こす
  ・この段階を見つけ、積極的に介入する
  ・入院後の生存率は低栄養・At riskと密接に相関する
  ・ふくらはぎが全身の骨格筋量を適格に表現
    ・歩くスピードが遅くなる

5.サルコペニア
    ・骨格筋量の減少と質の低下
    ・早く動きの筋肉が落ち、遅い動きの筋肉は落ちない
    ・屈筋優位
    ・プレサルコペニア 赤信号より黄信号を治療する
     骨格筋量は減少しているが、筋力は落ちていない
  ・サルコペニアとしての骨格筋の量の減少と筋力低下以外に、
          バランス維持能の低下が有害事象を起こす要因である
    (バランス能が落ちると、
     計算しながら決められたポイントを歩くスピードがかなり遅くなる)
6.サルコペニアの対策
    ・軽い運動と、
    エネルギー・タンパク質補充による栄養療法の有用性が立証されている
  ・まず観察研究、そして介入試験
  ・大豆やヨーグルトの上澄みに含まれるロイシンと、ビタミンDを補充する
    ・間食時の水分補給が大切
    水の働きは、吸収・排泄のための輸送とエネルギーを作る場所

<案内文>
 口からの食べ物・栄養摂取を支援するため、歯科医師は歯科治療・口腔ケアに取り組んでいるところですが、近年、高齢者の低栄養の問題がクローズアップされるようになってきました。
 日本は世界に先駆けて2007年、人口の21%以上が65歳以上の高齢者という超高齢社会に突入しました。最近では3000万人を突破したという報道までありました。
 云うまでもなく、医療費総額に占める高齢者の医療費の割合は5割を超え、増加傾向をたどっています。寝たきりとなったり、要介護や要支援とならないように、高齢者の健康寿命をのばす取り組みが必要となってきており、その大きな柱の一つが低栄養の改善と言われています(栄養、運動、口腔衛生)。それは、低栄養がサルコペニア、肺炎、骨折、内臓障害、窒素死に到る原因の大きなものであるからですが、対象となる高齢者の日常の医療に携わる職種の多さから、連携の困難さが想起されています(医師、看護師、栄養士、ケアマネージャー、介護スタッフ、歯科衛生士、歯科医師など)。そのため、これら多職種間で栄養評価の共通化が必要であり、それは簡便、正確で、汎用性のあるものが望まれます。
 「MNA®」(簡易栄養状態評価表)はまさにそうしたニーズに応えるべく生まれたものであり、今回、日本にMNA®を積極的に広めておられる武庫川女子大学教授・雨海照祥先生にご講演をいただくことは、MNA®の持つ利点、現場で生じる課題やその解決例など、理解を深める貴重な機会となると思います。是非、ご参加ください。

<講演抄録>
KEYWORDS : 超高齢社会、健康寿命、低栄養(症候群)、MNA-SF ®、サルコペニア

 我が国の65歳以上の高齢者人口が全人口に占める割合(高齢化率)は、23.3%とされる1。また県別高齢化率では、石川県は23.9%、全国45都道府県中35位と低いものの、2035年の高齢化率の伸び率は10.6%、全国17位と予測されている1。
 一方、2013年、厚生労働省が初めて算出した「日常生活をサポートなしでおくれる」健康寿命は、男性70.42歳(平均寿命79.55歳)、女性73.62歳(同86.30歳)であった。平均寿命と健康寿命との差を算出してみると男性9年、女性12年を超える。このことは高齢者の最後10年間、サポートを必要とする生活を送っていることを意味する。
 今後30年以上、高齢化率が上昇し続けると予測される我が国において、高齢者の生活を考える際に、健康寿命を少しずつでも伸ばし続けるための科学的根拠に基いた政策立案は急務といえる。
 このような社会背景において、日常生活の中心軸の一つと考えられる【栄養】がその一翼を担えるか、の検証は重要であろう。言い換えると、高齢者の【低栄養(症候群)】の予防、早期発見・早期治療の可能性を検証する必要があるといえる。
 そこで今回そのツールとして開発された高齢者のための栄養アセスメントツール(Mini-Nutritional Assessment: MNA-SF ®)2の有用性を検証し、さらに発見された低栄養症候群における骨格筋の量と質の低下であるサルコペニア3の意義を概観することで、日本の社会の近未来の改善を考えたい。

参考文献
1, 平成24年版高齢社会白書、内閣府
2, 高齢者の栄養スクリーニングツール MNAガイドブック: 雨海 照祥監修.医歯薬出版,2012.
3, 栄養・運動で予防するサルコペニア: 葛谷雅文・雨海照祥監修. 医歯薬出版,2013.

<講師略歴>
1982年 筑波大学医学専門学群卒業
1982年4月 順天堂大学附属病院 外科見学生、外科研修医を経て
1984年 順天堂大学附属病院 小児外科 勤務
1987年 静岡県立こども病院 外科 勤務
1989年 山梨県立中央病院 小児外科 勤務
1989年7月 筑波大学附属病院 小児外科チーフレジデント
1990年 茨城県立こども病院 小児外科 勤務
1992年 筑波大学臨床医学系 小児外科講師
1993年〜1994年 英国バーミンガム小児病院 外科医員(英国医師免許取得)
2004年 茨城県立こども病院 小児外科部長
2007年 武庫川女子大学 生活環境学部 食物栄養学科 教授
【医学博士】

石川県保険医協会
金沢市尾張町2-8-23 太陽生命金沢ビル8階
TEL 076-222-5373
FAX 076-231-5156
Email  ishikawa-hok@doc-net.or.jp

 

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